転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


139 料理に使える薬草、錬金術編……あれ?



「旦那様。話し合いの為に赴いたと言うのであれば、すぐにお帰りになられる事は無いでしょう。我々も薬師ギルドへ参りますか?」

「いや、今回このギルドに来た用向きは他に洩らせる内容では無いからのぉ。流石に薬師ギルドに出向く訳にはいくまいて」

 バーリマンさんが薬師ギルドに言った理由が解った所で、ストールさんがロルフさんに僕たちも行く? って聞いたんだけど、どうも行かないみたいだね。

 じゃあ今回は、お手紙だけ渡して帰る事になるのか。

 僕はちょっと残念だけど、それも仕方ないねって思いながらその事をロルフさんに伝えたんだ。

「いや、折角ルディーン君が訪れてくれたのじゃから、そう言う訳にはいかんよ」

 ところが、ロルフさんは僕をそのまま帰すつもりは無いみたいなんだよね。

「ライラ、住まぬが薬師ギルドに行ってギルマスを連れて来てはくれぬか?」

 どうやらロルフさんは、僕との話し合いのほうが大事だからってバーリマンさんを呼び出すつもりみたいなんだ。

 でもさ、ご用事があるから行ったんだよね? なのに呼んじゃって大丈夫なのかなぁ?

「宜しいのですか? 薬師ギルドからの申し出で、話し合いの為に訪れているのですが」

「なに、食用可能な薬草についての話は今日でなくとも構わぬだろうが、ルディーン君との話は今日を逃すと次はまた何時になるか解らぬからのぉ。声をかければ、すぐに帰ってくる気になるじゃろうて」

 ストールさんも同じ考えだったみたいでロルフさんにホントにいいの? って聞いたんだけど、あっちは今日じゃなくてもいいから呼んで来てって言うんだ。

「解りました。ではギルドマスターを呼んでまいります」

 それに納得したストールさんは、ロルフさんにそう言うと呼びに行く為に錬金術ギルドを出て行こうとしたんだよね。

 ところがそれを見てたペソラさんが慌てて止めたんだ。

「待ってください。お客様にそんな事をさせられませんよ。ここは私がギルドマスターを呼んできますからフランセン様、いつものように店番をお願いできますか?」

「うむ。確かにわしが手紙や伝言を頼むのはいつもの事じゃからのぉ。今日はルディーン君も居る事じゃし、ここで愛用の椅子に座って店番としゃれ込むとしようぞ」

 ロルフさんがそう言うと、ペソラさんはホッと胸を撫で下ろしてカウンターの奥から座るところが皮製の背凭れがついた椅子を持ってきた。

 多分あれがさっきロルフさんが言ってた愛用の椅子なんだね。

 そしてペソラさんは自分が今まで座ってた椅子ともう一脚同じ椅子をカウンター近くに置いてから、

「それでは行って来ますね」

 って言って、出ていったんだ。


「さて、ただ待っておるもの暇なだけじゃからのぉ。ルディーン君。このギルドにも色々な薬草が置いてあるから、その中から料理に使えるものを探してみぬか?」

「お料理に使える薬草を?」

 薬師ギルドはそんなに遠く無いらしいけど、ぼ〜っと待ってるのも暇だからって、ロルフさんがこんな事を言い出したんだよね。

 でもさ、僕は薬草の事、そんなに知らないんだよね。

 薬局でも、これ知ってるって思ったパクチーやバジルなんかは薬草よりもお料理に使うことが多いって言われたし、それ以外にもいろんな物を見たけど、よく解んないものばっかりだったもん。

 だからロルフさんにそう言ったんだけど、

「よいよい。これはただの暇つぶしじゃ。別に見つからなかったとしても問題は無いのじゃからな」

 って言われちゃった。

 でもそっか。そうだよね。別に絶対見つけなくちゃいけないって訳じゃ無いんだから、とりあえず見てみよう。


「これなんかどうじゃ? 精神を安定させる効果がある薬草なんじゃが」

「このお花?」

 ロルフさんが出してきたのはドライフラワーになってる白いお花だった。

「これはな、カモミールと言って、お茶として飲むだけでもそこそこの効果はあるのじゃが、錬金術でポーションにすると錯乱した者を落ち着かせる効果があるのじゃ」

「お茶にして飲んでるの? じゃあ、もう食べてるじゃないか」

「む? おお、確かにそうじゃな」

 僕がそう言うと、おかしそうに笑いならが自分の額を叩くロルフさん。

 そしてじゃあこれなんかはどう買って、また新しいのを持ってきたんだ。

「ポーションの材料としては結構一般的な物でな、チョウジと言う薬草じゃ」

 ロルフさんが言うには、この薬草は切り傷を治すんじゃなくて、全身を強く打ったりして炒めた怪我を治すポーションの材料になるんだって。

「何か凄い匂いだね。でも僕、こんな匂いの料理、知らないなぁ」

「なるほどのぉ。確かにこれは少々特殊な匂いをしておるから、にんにくや生姜のように何かしらの使い方ができるのではないかと思ったのじゃが」

 確かにこういう強い匂いの物は何かしらのお料理に使えるんだろうけど、僕は知らないんだよね。

 だからパス。

「では、これはどうじゃ? ウマゼリの種じゃ。これは食物によって体に入った毒を排出させる効果がある。比較的良い香りじゃと思うのじゃが」

 そう言ってロルフさんが持ってきたのは、何かひまわりの種みたいなもの。

 いい匂いだって言うから僕もちょっと匂いを嗅いでみたんだけど、

「あれ? これ、僕が知ってる匂いだ。でもなんだっけ?」

 これも結構強い匂いなんだけど、種の状態だとあんまり強い匂いがしないから良く解んないんだよね。

「ふむ。ルディーン君が嗅いだ事があるという事は、何かしらの料理に使えるのかも知れぬのぉ」

「いい匂いだから、お肉とかと一緒に料理したらおいしくなるかもしれないね」

 多分暖めればもっと香りが強くなるだろうから、にんにくみたいな使い方ができるかも。

 あっ、でも、

「ただ、食べたら物凄く辛かったり苦かったりするかも知れないけどね」

「ふむ。もしそうなら料理には向かぬのぉ」

 そう言えば薬草の中にはそんなのもあるってストールさんやノートンさんが言ってたし、いい匂いだからと言ってもすぐに食べちゃダメだよね。

 だから僕は、ロルフさんにそう言っておいたんだ。


「ルディーン君、これなんかどうじゃ? これは酒の毒を中和する効果がある薬草でのぉ。ウコンというのじゃ。これから作られたポーションは結構売れ筋なのじゃぞ」

 ウコン? って、その名前は聞いたことあるぞ。確か前世でもお酒のお薬として売られてたっけ。

 でもさ、それ以外に聞いたこと無いし、お料理に使うなんて話も聞いたこと無いから多分使えないんじゃないかなぁ?

 僕がその事を話すと、

「やはりそうか。これは単体で口に含むとちと苦くてのぉ。おまけに土臭いからやはり料理には向かぬか。もしこれが料理に使えれば酒をたしなむ物たちにとってはこれ以上無い良い知らせになると思ったのじゃが」

 ロルフさんはそう言って残念そうにしたんだ。

 でもそうだよね。お酒を飲みすぎても、この薬草が入ったお料理を食べたら大丈夫かもしれないもん。

 もし使えるならいいなぁって思うのも解るよ。

「ではこれはどうじゃ? 主に毒消しポーションの材料になる薬草なんじゃが」

 そう言ってロルフさんが持ち出してきたのは緑色のとっても青臭い薬草だった。

「ロルフさん。これ、食べるの?」

「いや、わしは口にせぬが、この薬草の原産地ではこれをそのままサラダにして食すそうなんじゃ。じゃからルディーン君なら何かしらの食べ方を知っておるかと思ったのじゃが……やはり、これは無理か」

 ロルフさんはやはり無理かって言いながらその薬草を棚にしまったんだよね。

 因みにその棚にはコリアンダーって書いてあったんだけど、あれ? どっかで聞いた名前だ。

 ロルフさんも食べる所もあるって言ってたから、案外何かの食材になるのかもしれないね。僕は食べないけど。

「後はそうじゃなぁ。香りが良い物という意味では何かに使えそうなのはこれかのぉ」

 そう言ってロルフさんが持ってきたのは乾燥した茶色くて小さな種のようなものだった。

「これはカルダモンと言ってのぉ、怪我をして静養をしている者の体力を回復させるポーションの材料になるんじゃが、このさわやかな香りが良くて、匂いのきつい薬草の香りを和らげるのにも使われることがあるんじゃよ」

 なんとこれ、にんにくの匂いを和らげるのにも使われる事があるんだって。

「そっか、ならきっとこれも臭み抜きに使えるだろうから、お肉料理に使えそうだね」

「うむ。ただな、これはポーションとしての主要が高い為に意外と高価でのぉ。流石に胡椒などの代わりにはならぬなぁ」

 胡椒って結構高いよね? それの代わりに使えないって事は、このカルダモンってのはもっと高いってことなのか。

 それじゃあ、そんなのを料理に使えるわけ無いよね。

「折角料理に使えそうなものが出てきたというのに、残念な事じゃ」

 そう言ってコリアンダーの種をしまったロルフさんは、

「今ある薬草で、口に入れても問題がなさそうなものはこれが最後かのぉ」

 と言って、とっても緑の濃い葉っぱのついた枝を持ってきたんだ。

「ベイリーフじゃ。まぁ、これに関しては期待しておらん。何せ葉の繊維が食用にするにはちと硬いからのぉ。じゃが、薬草としては優秀でのぉ、そのまま煎じたものでも肝の臓や腎の臓を癒す効果があるし、ポーションにすれば先のカモミールよりも精神錯乱を癒す効果が強いものができる。何せ木の葉から作ったポーションなら、魔族の精神攻撃を治すポーションすら作り出すことができるのじゃからな」

「そうなの? 凄い薬草なんだね」

「うむ。それ程の効果を持つと言うのに、これは草ではなく木になる葉じゃから、収穫量が多くて比較的安価なのじゃよ。それだけに何かに使えると良いのじゃが」

 そういってロルフさんは僕の方を見るんだけど、残念ながらベイリーフなんて薬草、僕は知らないんだよね。

 だから素直にそう言ったんだ。

「まぁ、これに関しては安くて香りが良いからのぉ、すでにどこぞの料理人が何かしらに利用しておるかもしれん。ただ、薬として煮出すと苦味が出るから、わしとしては使い道は思いつかぬがな」

「いい匂いの葉っぱはいっぱいあるもんね。僕のおうちでもバジルとかは食べてるし、安くていい効果があるなら、きっと凄い料理人さんが料理にしてくれるよ」

 僕だって料理のジョブを持ってるけど、料理人ってわけじゃないからね。

 知ってるもんならそのまま教えてあげられるけど、知らないもんまで南下に使えるようにできないかって言われても困るから、そういうのは全部他の人に任せちゃったほうがいいと思うんだ。




 さて、お気付きの方もいると思いますが、今回出てきた薬草はカモミール以外全部カレーのスパイスです。

 これに後唐辛子があればカレーは作れるんですよね。

 因みに、察しのいい方はお気付きでしょうけど、唐辛子は今までのストーリーですでに出て来ています。

 でもまぁ、ルディーン君はスパイスの調合の仕方なんて知らないので、カレーがこの世に出る事は無いんですがw


140へ

衝動のページへ戻る